まりコの東日本大震災 

    カテゴリ:町工場女的日記

    地震がはじまったとき、
    まりコがいた事務室には5人ほどが執務していて、
    わたしもモニターをにらみながらキーボードたたいてた。
    「地震だ」
    だれかが言った。

    みんな、なんとなくあたりを見回したけれど
    まりコの会社のあたりは、
    関東ローム層特有の長周期震がふつうなので
    妙に間延びした横揺れにも、わたしは
    「またか。でもじきやむよね」
    くらいにおもってた。

    ところが、いつもならすぐ小さくなるゆれはなかなかおさまらなくて
    むしろだんだん振幅がおおきくなってきた。
    「ドア開けよう」
    パートのTさんが、言いながら立ち上がってちかくのドアをあけた。
    「ドア開けよう」
    わたしもオウム返しに言った。
    部下の男性があわてて窓をあけようとした。
    図面棚がゆらゆら揺れだした。
    「棚から離れて」
    事務室の入り口に歩きながら私は言った。
    隣室から重量物が倒れる音がした。
    階下から悲鳴がきこえてきた。
    「外でよう」
    みんなに言ってから、さきに階段を下りかけたら、
    工場では作業室の従業員を避難させはじめたところだった。
    わりと気の回るHさんが作業室の入り口に立って
    「いそいで、駐車場へ出て、はやくはやく」
    とせかしていた。
    パートさんたちのなかには、まだ笑っているひともいたけど
    訓練なんてしていないわりにはみんな一列になってスムーズに
    通用口を通って建物の外の駐車場に向かっていく。
    20人があらかた作業室をでて、
    男性の社員が出入り口に集まったあたりで本震がきた。

    ボルトでつられている40Wの天井灯が、
    サーキュレーターが、電らんが、
    いまにもはずれそうな角度にぐわんぐわん揺れだした。
    避難のしんがりについたHさんと、まりコと、もうひとり男性の三人で、
    作業室入り口あたりから一歩も動けなかった。
    100Wのはんだごてがのった工具台車が、
    横揺れでひとりでにうごいていくのがみえた。
    図面の入ったキングジムファイルが、書架からばさばさ落ちるのが見えた。
    場内壁面に張ってある石膏ボードが
    あちこちでめりめりと音をたてた。
    その石膏ボードと出入り口扉の鉄枠がべつべつのうごきをしているのが
    しがみついていた手の感覚でわかった。
    そもそも零細企業に十分な耐震対策などする余力はないので
    「地震がきたらまっさきに倒れるなぁ」
    とみんなで言っていた一本40キロもある材料が
    どすんどすんと倒れていくおとがきこえた。

    地震がどこまでおおきくなるのか、
    このまま天井設備が落下しはじめるのか、
    窓枠がはずれたりしてしまうのか、
    あるいはこのまま持ち堪えるのか
    それがわからないことがいちばんこわかった。
    たっぷり、数分はゆれていたとおもう。




    ゆれがおちついて、
    やっとまりコたちも駐車場に出てみたら
    いつも整然と集積してある製品のカートンケースが
    だらしなくずれてしまっていた。
    パートさんたちが乗ってきている自転車が、のきなみ倒れていた。
    みんなてんでに、地震がおきたときの様子を話し合ったり
    自宅に電話しようとしたり近所を見回したりしていた。
    さいわいケガをしたひとはいなかったので、
    作業室の従業員はほとんどが近所のパートさんなので
    係長(まりコにコクった彼)に
    「パートは帰宅させて社員は場内の状況把握しよう」
    と言ったけれど、
    たまたま社長が外出中だったせいか
    うん、と言ったきり動こうとしなくて、
    去年、病気療養で退いた元工場長にも同じこと言ったけれど
    「そうだね」
    と答えるだけでとりまとめてくれる気配がなくて
    しょうがないので
    「みなさんきいてください!」
    ってまりコがダミ声をはりあげて、
    ・近所在住で自宅の様子を確認したい人は上長に一言言ってすみやかに帰宅すること
    ・問題があった場合、電話は不通が予想されるのでそのまま会社にもどらなくてよいこと
    ・遠方の従業員は自宅や家族と電話連絡をとる&場内設備や製品の損害状況をしらべること
    ・原則操業は中断するから、どこまで作業をすすめてやめるか各係長は相談して指示すること
    みたいなこと言ったら
    みんな我にかえったよーに、あとはそれぞれしごとすすめてくれました。
    まぁ、じっさいそこにいる中では肩書き的にまりコがいちばんうえだったから
    というのもあるですけど。




    そのあとはもうまりコは仕事になんかならなくて
    場内見回ったり片づけをしたり
    ニュースの三陸海岸の津波をみて
    「これはただごとじゃないぞ・・・・」
    とか話したり帰ってきた社長に状況を報告して
    あとの指示はおまかせしたんですけれども
    どうやら電車が運転再開のメドたちそうになくなった時点で
    5キロ圏内在住の同僚が徒歩で帰途についた18時ごろ
    まりコはSF氏とやっと電話が通じて
    彼はたまたまシフトが休みで旧居から荷物をはこぶ車の運転中だったので
    会社まで車で迎えに来られないかって頼んだですけど
    みなさまご存知のとーり一般道も大渋滞でとても近づけそうに無いことがわかったので
    20時ごろにはもう、会社に泊まる覚悟でおったんですが、
    22時ごろに、ノロノロ運転だけど電車がうごいてくれたおかげで
    いつもの倍くらい時間はかかったけれど
    やっとこ、うちに帰りつけました。


    会社のほうがそんな揺れかただったので
    ぜんぶ飛び出して割れてるんじゃないかと心配した食器も無事で
    ほかも存外に倒れたり落ちたりしていなくて、
    何事もなかったよーにヒザの上に乗ってきた猫たちとか
    「渋滞のなか6時間運転してたよ」
    とげんなりしてたけど無事だったSF氏の顔も見たらばですね、
    いわゆる
    『緊張の糸がゆるんだ』
    とゆーやつなんでしょうね。
    おとなげなく
    わんわん泣いてしまいました。・゚・(ノД`)・゚・。



    こわかった。
    こわかったよ、地震。
    ぐすん。




    コメント

    No title

     なんにせよ、人が無事で、なによりでした。
     責任ある立場は、たいへんですね。
     わんわん泣く権利は、充分にあると思います。
     緊張の糸をゆるめてくれる相手がいて、よかったですね(^-^)

    No title

    無事でよかったです!!!

    ほんとうに大変でしたね。
    SF氏もにゃんこたちも無事でよかった。

    これ以上被害が広がらないよう願ってます。
    気をつけてくださいね。

    No title

    まりコさん無事でよかった。
    わたしはギャラリーにいました。
    お客様もいたのでお守りしなければという思いだけでした。
    他の作家さんやギャラリースタッフも同じ気持ちで動いていました。
    思いのほか頑丈なビルだったので災害もなく、作品も無事でした。
    被災の規模が時間とともに大きくなるのは悲しいです。

    No title

    御無事でなによりでした。

    わたし、津波の直撃を受けた建物に、津波が来る直前までおりました。

    あとでニュースを見たら、その近辺のコンビニが冠水したりしていて愕然としました。

    もう少し避難が遅かったら、と思うと、怖くなります。

    No title

    ホントにご無事で良かったです。
    私の職場でも、みんなで外に飛び出しました。
    1回だけじゃなく、2回3回と大きな揺れが来ましたからね。
    本当に怖かったです。
    私は真っ先に頭に浮かんだのが、ウチの猫2匹でした。
    ウチにたどり着いたら何事も無かったようにニャんニャこ餌をねだってきましたよ。

    今私たちに出来る事は、節電だそうです。
    一人一人の小さな積み重ねが大きな力になります。
    夜に備えましょう。

    No title

    地震、恐かったね。
    でも、何事も無くて良かったです。
    (=⌒▽⌒=)

    No title

    >みなさま
    たくさんコメントありがとうございマス。
    みなさまもご無事でなによりでした。
    あしたからまたがんばりマス!

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